【本】 不適応症候群/江波戸哲夫
 職場や家庭で様々な心理的障害を抱えた人達が来る精神科で働く主人公が、彼らと対峙し治癒に続く道へ向けて取り組むヒューマンドラマ。私よりあと10年くらい上の世界が描かれているのだが、非常に興味深い。毎日明るく元気だったサラリーマンが突然失踪したり、女装に快感をおぼえる男がいたり、何言われてもヘラヘラしていても実は心の中で折れていたのを自分自身で気づかない人がいたり、まあ、この他にも何人かの精神的障害を抱えている人が本の中には登場する。そんな精神的障害者と対峙する主人公も強迫神経症という精神病の持ち主。そこのクリニックの院長は本文中でこのように語る。

 「人間はもともといろんなふうに壊れるようにできているんだ」

 確かに身体ひとつとっても、一人の人間が生きていく上で一生怪我をしないという人はあまり聞いたことがないし、長生きすれば体調も悪くなる。きっと精神も同じということなんだろう。今でこそ気軽に「鬱だわー」なんて言ったりしているけど、数年前まで鬱なんて言葉は禁句に近い言葉だった気がする。メンヘルって言われても何のことだかわかる人も増えてきたしね。
 きっと、それはどんどんと「隠し事のない社会」へ向かっているからなんだろうけど、経済の急激な成長が見込めない今、高度経済成長の時代のような昇格もなくただ今を生きるために必死に仕事をする現代のサラリーマンは、昔と比べて無力感を持ちやすく軽度の鬱状態に陥りがちなのかもしれない。でも、自分で言えている時点で大事ではない。
 この本でも、殆どの人間が「自分は全然平気ですよ」と自分自身のことに気がついていないか、取り繕っている。周りの人間が「おかしい」と気づくのだ。だから俺を含め、自分自身で笑いながら鬱を標榜するような人間なんて殆どがなんでもなくてただかまってほしい人なだけなんだ。本当に再生への道を歩ませなければならない人は、周りの人間が微妙な変化にちゃんと気づいてあげなければならない。でも、そういう人は自覚していなし、自分にプライドがあるから、なかなか認めないのだろうけど。

 うーん、 こころ の問題は、難しい。
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by hidemite | 2009-03-14 01:38 | 日常
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