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【屋上】 丸い月を見ている
 約一月前に両腕の肘から手首までがおよそ正常な人間の腕とは思えない位のぶつぶつが出来、ようやく収まりかけていた頃に左手の薬指を突き指し、湿布を貼り続けるもいっこうに治る気配が無く、先週の金曜日に医者に見てもらったら2週間ぐらいはバスケやんないほうがいいよと言われつつも昨日もテーピングをぐるぐると巻いてバスケをし、やっぱり痛みが未だひかなくてちと後悔しちゃったりしなかったりで、それでも扇風機の掃除だけはしてみたりするなんともはりのない一日を送り続けて、「ああ、結局今日も部屋の掃除が出来なかったなー」と洗濯物を取り込みながら考えたりしている今日この頃。

 今日はいつも通り昼に起床し、椅子作りに励むべく鋭意作業をしていた。私は自他共に認める無類の日曜大工好きであり、暇さえあれば何かを作ろうと常日頃考えている。といっても休日は暇だらけなので睡眠・洗濯・アイロンがけ・買い物位しかバリエーションがなく、黙っていても台所前の作業スペースにおいて鋸で木を切っており、隣近所からは最近のリフォーム番組に感化されて劇的なビフォーアフターが起きているのではといつクレームが入ってもおかしくない状態だ。日曜大工好きと言うわりには性格が大雑把な私は、塗装というものを全くしない。だから殆どは木を買って、切って、穴を空けて、木ねじで接合すると言うごくごく単純な工程のみで完成させてしまうのだ。勿論自分で使うのだから見た目に拘る事は全くなく、機能性さえあれば十分なのである。逆に言うと機能性を求めるが故の日曜大工なのだ。部屋の空間をなるべく上手に活用する為には既成品ではなかなか満足のいく仕上がりにはならず、数センチの出っ張りが邪魔をし、快適な一人身生活に痛恨の一撃を与えてしまう。こうして部屋の中には剥き出しの木材が整然と並んでおり、飾り気のない生活の一端を担っているのだ。

 木材完成品(あえて家具とは言わない。そう言ってしまったら本当に家具を作っている人達に対して失礼かもしれないので。)の製作が全て順風満帆かと言ったら、実は案外そうでもなく、常に誤差やケアレスミスとの戦いが潜んでいる。例えば強度の計算式が未だに解らない故経験から推測しギリギリのラインを狙うも結局天板がたわんでしまいガッカリしたり、意気込んで作るも途中で穴あけの多さに絶望しついつい計算を間違え違うところに穴を空けてしまったり、寸法通りにけがくも穴あけの時にちょっぴりずれてしまい板が微妙に斜めに傾いてしまったり、意外に木ねじが太く板が割れてしまったり等等・・・なかなか簡単にはいかないものだ。勿論これらの幾つかの問題は高価な工具を購入することでかなり改善されることになるのだが、日曜大工を職業としているわけではないので、流石に購入までは至らない。だから最終的には気合と根性で乗り切るしかなく、大抵手でグイッと押さえて板がミシミシと叫んでいようとお構いなしにずれないように無理矢理とめてしまうという荒業を使う場合も少なくない。というかそんなんばっかりだ。だからいつかバキッと音を立てて崩壊していくのではないだろうかと考えることもあるが、大抵は使ってしまうとそんなことも忘れてしまう。ちなみに一番最初に作った漫画収納棚は製作から既に10年が経とうとしているが未だに実家で現役生活を送っている。

 とにかく私は作る事が大好きで、この他にもパソコンの自作や電子工作もやったりする。何故そんな人間になったかというと、始めた当時は既成品を買うほうが数倍高かったから。一番のきっかけとなったのは高校時代に「テレビを観たいが、親は決まって野球のチャンネルにロックし、10時を過ぎれば部屋に戻らねばならない」という葛藤と闘い続けてしまったことだろう。少し話をそれるがある会社の先輩に「ライファー」と呼ばれた事がある。これは知る人ぞ知る月刊誌「ラジオライフ」から来ており、この雑誌とライバル関係にあるのが「アクションバンド電波」と言う雑誌で、高校生の頃はこの2誌を発売日に本屋で立ち読みし、内容が気に入ったら購入するというおよそ通常の普通科に通う高校生とは異なる生活を送り、一歩間違えば盗聴盗撮等で犯罪を犯しかねない人間と誤解される恐れもあったかもしれないほどの興味を持ち合わせていた。話を元に戻すと、その雑誌に当時秋葉原で売っていたパチンコ台からはがされた液晶テレビを使いテレビを見ようという記事が載っていたので、その記事を参考に5インチの液晶テレビを製作した。当時そのサイズの液晶テレビは車載用としてしか販売しておらず、軽く5万円を上回っていたと思うが、これは画質が多少落ちるも1万5千円で製作できたのである。この衝撃は留まる事を知らず、ついにはスーパーファミコンの中にテレビを内蔵させて乾電池で動くようにしたものまで作ったこともあった。今ではこれらのものを作ろうとすると逆に既製品のほうが性能も良く安いと言う事態になっているからオドロキだ。それでも、自分が製作してそれが動いた時の喜びは、なにごとにも代え難い。だから、作ることは楽しいのだ。

 今日、家に帰る時にたまたま空を見ていたら、階段が屋上に続いている気がしたので、取り敢えずスーパーで買った卵を冷蔵庫に入れ、外に出て階段を上がると屋上へと辿り着くことができた。この建物は3階建てなのでちょうど高さとしては4階と同等になるのだろうか。周りにはあまり高い建物はなく、遠くのビルの明かりが良く見える。上を向くと、都会の空だというのに多くの星が瞬く姿が確認できた。目の前には丸い月がある。濃紺の空に白い綿飴のような雲が風に流されている。暫くその場に佇み、何もかもを忘れてしまいそうになるくらいの気持ちよさに酔いしれていたのだが、はたからみたら屋上で手擦りに寄りかかっているホタル族間近の人間と勘違いされてもおかしくないなあと、階段を降りる時は誰にもすれ違わないようにと急に恥ずかしくなり、蚊にも食われた8月の初日はこうして幕を閉じていく。
by hidemite | 2004-08-02 02:35 | 日常
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